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イギリス編

その5 イギリスの食事情−歴史的考察

大邸宅の写真
大邸宅

 大航海時代以降、世界を制した大英帝国。カレーはインドが発祥地であるが、世界に広めたのは、ほかならぬイギリスである。しかしながら、世界の覇者が、各植民地の美味なる食を自国に持ち込みフランスの様に食の栄華を極めることは無かった。これはイギリス人の気質によるものなのか? 階級の頂に位置する貴族でも「食に貪欲であってはならない」と考えている様だ。
 かの有名なウェリントン侯爵に使えていたフランス人シェフが、あの手この手で、御主人様を満足させようと努力するが、侯爵は一度も料理の感想を述べる事は無かったと伝えられている。まして労働者階級に至っては、彼らが入手しえた調理器具・調理環境では、食生活はシンプルかつ粗悪なものであったに違いない。中流階級の家庭ではメイドを労働者階級から雇用することが多く、その多くは正式な料理教育を受ける事は稀。まさに"食の最悪スパイラル"。

Fish&Chipsの写真庶民の味Fish&Chips

 昔も今も、味覚を決定する幼少期、貴族の子供は、早くから親元を離れ、18歳頃までパブリックスクールで寮生活を送る。そこは厳しい規律と清貧が強いられ、そこでの食生活は、「残さず文句を言わず食べる」事が義務づけられ、その内容は、かなり粗末なものらしい。また大邸宅に住んでいた貴族は、台所から食卓に届くころには、すっかり冷めた料理になっている状況。