茎工房
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コラム〜世界の食〜

ロシア編 -ロシアの農奴制に関する歴史的考察-

 18世紀のエカテリーナ2世の統治時代は「貴族の天国、農民の地獄」と形容される様に両者の隔たりが世界に類を見ない程、甚しかった様だ。エカテリーナ2世と言えば、当時のロシアをヨーロッパ強国と肩を並べるまでに発展させる偉業を成し遂げた女皇帝である。
 富と栄華を極め尽くした。エルミタージュ宮殿とその財宝(現在のエルミタージュ美術館)、ボリショイ劇場などの設立など、文化面で果たした貢献は偉大である。然しながら、貴族(大地主)などの特権階級が宮殿のような邸宅に住み、たくさんの農奴を抱え、贅沢三昧の生活を送っていたその栄耀栄華は農奴制度の上に成り立っていたことは紛れもない事実である。当時の農奴の生活は悲惨そのもので、地主の都合で土地と一緒に付属品の形で競売されていた。一日中あるいは一生、ただ生存するためだけに働き続け、極寒の地で栄養失調や餓死など日常茶飯事だった様だ。その悲惨さは、日本の封建制度時代の農民やアメリカの黒人奴隷の悲惨さの比では無かった様である。
 1986年皇帝アレクサンドル2世により、農奴解放令が出されたが、農民の生活は依然と苦しく、各地で農民の暴動が起こり、やがて、ロシア革命へと時代が流れていく。長く続いたロシアのこの農奴制度は、技術改良の意欲を失わせ、結果的に広大な土地を持つロシアの農業の大きな障壁となったのは皮肉なものである。ロシア貴族ラジーシチェフが書いた「ぺテルブルグからモスクワへの旅」という旅行記は、当時の農奴の悲惨さ詳細に描いている。興味のある方は是非読んでみて。

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