茎工房
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コラム〜世界の食〜

インド編 -“浄”と“不浄”-

 インド旅行で不思議に思うことは、レストランに女性の従業員が居ない事だ。高級レストランなどには、綺麗に着飾った受付の女性はいるものの、料理を運んだりはしない。もちろん女性が厨房で料理作ることは無い。どうやら、これはヒンドゥの“浄”と“不浄”の文化から来ている様だ。
最高位カーストのバラモンは最も浄性が高いが、不浄なものに触れると穢れてしまうという観念がある。女性の穢れは月経と関連がある様だ。特に月経中の女性が 触れた水や食べ物は、触れてはいけない不浄のもの。そういえば、日本でも神社仏閣には女人禁制の所がある。その理由はやはり女性が“不浄”だからだ。
 インドの特徴は“穢れ”の感覚が社会のすみずみまで徹底されて、街の飲食店、外国人の多いレストラン、カフェ、更にはホテルのバーですら女性従業員が排除されている。面白い話として、インドのレストランのもう一つの特徴は男性従業員が必要以上に多いこと。それはカーストの低い者が触れた飲食物は穢れており、本来は料理人もウエイターも高位のカーストでなければならないが、さすがこれは現実的ではない。厨房の料理人はともかく、人の目にふれるウエイターはカースト制により分業を余儀なくされる。高位のカーストは飲食物を直接運び、低位のカーストは汚れた皿を片付ける仕事を担う。日本では一人で担う仕事を2人や3人係ということになる。これはカースト制が生んだ“分業”。人口が多いインド社会で共同体を安定させる為の「工夫」と「知恵」なのかもしれない。

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