茎工房
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コラム〜世界の食〜

アメリカ編 -カリフォルニアキュイジーヌ-

 “負のイメージ”の強いアメリカの食。それを覆すようなトレンドがカリフォルニアで起きたことをご存知だろうか? 80年代の「カルフォルニアキュイジーヌ」である。女性シェフ、アリス・ウォーターズが1971年バークレイに「シェ・パニース」をオープンさせた事に発する。地元で採れた旬のオーガニック食材を使った料理が大評判となる。カリフォルニアは温暖で冬が短くアメリカ全国の野菜畑といっても過言ではない。その地の利を生かした事や自然派インテリやゲイなどから共感を得たのである。料理の特徴は「今までのボリュームのある肉中心ではなく、野菜の多いヘルシーでライトなもの」。チャード、ケールやフェンネルなどの野生味の青野菜が多く、それにオレンジ、イチゴ、グレープフルーツ、葡萄、イチジク、などの果物そして、アーモンド、クルミなどのナッツを加えるサラダが多い。また野菜をオリーブオイルで炒め、そのまま蓋をして蒸し煮にする調理法。苦みのあるこれらの野菜は肉料理とよく合う。また、地元産の食材を使う事は、地元経済をサポートし、長距離運搬を省くことによる炭酸ガス排出の低減につながり「環境にやさしい」メリットもここにある。アリスが蒔いた種が単なる料理法ではなく、人々のライフスタイルや社会意識を変え、地産地消・オーガニックフードなどの形で引き継がれ、21世紀に入ってアメリカ全土はおろか、全世界にじわじわと浸透してきている。近年はスローフードの活動家として知られており、食を通して人生を豊かにするためのライフスタイルを提唱し続けているようだ。筆者がサンフランシスコに住んでいた折、2度ほど伝説のレストラン「シェ・パニース」で食事を経験した。“野菜ってこんなに美味しいものだったのか”と感激したことを思い出す。

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